<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

若手社員が成長&活躍。社員を大切にする企業特集

1社目 多摩冶金株式会社/6名参加

 最初に訪問したのは金属に熱を加えて加工する金属熱処理事業を展開する多摩冶金。総務グループ長の平岡さんから会社の歩み、事業実績、海外事業の展開や雇用環境の取組についてお話をいただきました。その後、工場や熱処理実験を見学した後、若手社員たちとの座談会を行いました。

多摩冶金の職人魂の3つのスピリットが壁に大きく張り出されている

ツアー内容

会社説明 航空機エンジンの熱処理事業を展開する老舗冶金企業
 ツアーは総務グループ長の平岡さんの司会進行で始まりました。多摩冶金は1951年の創立以来、熱処理一筋に事業を継承しています。社名にも含まれている“冶金”とは鉄に熱を加えて加工し、様々な目的に応じた金属を製造するものです。現在、金属熱処理を事業としている企業は国内で600社程あるといわれる中、同社は航空機エンジンの熱処理をメインとすることで他社と差別化。航空機エンジンのトップメーカーから認定を受け、仕事を任されるなど、優れた熱処理技術を持つ世界有数の企業として事業を展開しているといいます。
 業界では老舗企業でありながら、経営陣は30、40代といい、ベンチャー企業のように新しいことへの挑戦もいとわない、「老舗のベンチャー」という経営指針を立てています。また、事業に新しい発想を取り入れるためにと、新卒者の採用にも積極的で、毎年2、3名を採用、過去4年で12名の新卒者を採用しています。女性も活躍しており、12名のうち4名が女性です。更に新卒定着率100%を誇っています。
 加えて、働きやすい環境づくりにも積極的で、有給休暇の消化率は80%以上を実現、月の平均残業時間も12.7時間ほどといいます。その他、会議室や応接室をモダンな空間に改装し、企業イメージの刷新も図っているという話に参加者は大きくうなずいていました。

  • 参加者に丁寧に会社説明をする平岡さん

工場見学 熱処理の現場を肌で感じる
 続いて参加者は、外気の中で熱処理を行う現場を見学しました。赤く熱した鉄が熱処理炉から見えた瞬間、参加者からどよめきが起こりました。その温度は880度にまで達しているというだけに、冷気が漂う工場内が一瞬熱気に包まれました。続けて、精密製品など空気中の酸素が入らないようにするための真空工場を見学。ここでは炉の中で工程が完結するため、目の前で火は見られないものの、工場を見学したことで熱処理という仕事をわずかながらも理解できたようでした。

  • 熱処理で真っ赤な炎が上がる
  • 熱処理炉が並ぶ真空工場内

体験 熱処理実験で金属の変化に触れる
 工場見学を終えた参加者は、金属の性質が変化する熱処理実験を見せていただきました。まずは、金属の棒をバーナーで熱し、ある温度まで熱した後に水で冷却します。参加者が金属の棒を曲げると、女性でも簡単にぽきっと折れてしまいました。次は、棒を熱した後に冷却し、再度熱するという実験です。最初に熱し急冷することを「焼き入れ」、冷やした後に再度熱し、室温で冷やすことを「焼き戻し」というそうです。参加者が次々に触れてみると、強度の増した棒はぐにゃりと曲がり、どれだけ曲げても折れない棒になりました。熱処理の仕方一つで金属の性質が全く変わってしまう様子に、参加者からは驚きの声が上がりました。

  • 熱処理実験で変化した金属の棒に触れる参加者

社員との座談会
 次に参加者は、若手社員2名を交えて座談会を行いました。参加者から仕事のおもしろさについての質問が投げかけられると、社員からは「航空機などのエンジンに携わる仕事だけに、緊張感がありますが、大きな仕事に関われている喜びも感じている」と答えが返ってきました。また、休みの日は何をしているかというプライベートな質問にも快く答えてくれました。社員の一人からは「趣味がオートバイなので、仕事を通してエンジンのことがよりよく分かるようになり、趣味も仕事も楽しくて仕方ない」といった答えもありました。
 また、社員数が少ないため社長をはじめ先輩社員との距離が近く、技術的なことをいつでも聞ける環境なので、仕事を早く覚えられるという声もありました。
 最後に平岡さんが登場し、エールを頂きました。
 「採用にあたって重要視しているのは、一緒に会社を作ってくれる人材かどうかです。皆さんも、入社を希望する会社のために何ができるか、どういう勉強が必要かということを考えてください」
 貴重なアドバイスに参加者はメモを走らせていました。

  • 仕事の楽しさが伝わってくる座談会となった

参加者の声

 「小さな工場から世界のトップ企業の製品が生み出されているということに感動した」、「若手社員の方と話をし、ライフもワークもバランスをとって働ける環境で活躍していることが分かった」という声が寄せられました。

2社目 株式会社エスエーティ/6名参加

 次に訪問したのは、メーカー保守期間が切れてしまったコンピュータシステムのメンテナンスを手掛けるエスエーティでした。蔵満代表の挨拶に続いて、人事総務部の担当者より会社概要、事業の特徴、同社のこれからの展望についてお話を聞いた後、オフィス見学、そして若手社員たちとの座談会が行われました。

蔵満代表の挨拶からツアーがスタート

ツアー内容

会社紹介 新人離職率0%を達成するための環境づくり
 「会社にはそれぞれ特徴があります。是非たくさんの会社を見て、比較してください」という蔵満代表の挨拶から始まりました。続いて、人事総務部の齊藤部長より、業界や同社の特徴についてお話をお聞きしました。
 一般的に、コンピュータシステムにはメーカー保守期間があります。その期間が過ぎるとメンテナンスはおろか、保証もされないことから新しい機器との入れ替えが必要になりますが、その費用は膨大であり、企業の大きな負担となっているそうです。そこでエスエーティは、コンピュータシステムのメンテナンスを主体とする事業を展開しようと、2006年に創業しました。
 同社が提供するシステム延命保守サービスは、メーカー保守期間が終了した機器を引き受け、部品交換などの修理やメンテナンスをすることで、「新しいものに買い替えるコストを抑えられる」と多くの企業から感謝の声が寄せられているとのことでした。メンテナンスに必要な部品の調達には、システム延命保守サービスの先進国である海外のルートを確保。また、社内検査の設備と体制を整えているといいます。
 コンピュータシステムのメンテナンスというと理系が有利なのではという参加者からの質問に、齊藤部長は、「入社後、6カ月の研修期間を設けており、基礎からしっかりと学ぶことができます。決して文系が不利ということはなく、近年の採用では、理系出身は3分の1程度です。理系の学生も、情報系問わず、畜産学科や化学学科出身の社員も居ます」と答えてくださいました。
 これには参加者から安堵のため息が漏れ聞こえ、長期間にわたる研修制度が、若手育成に大きく反映していることが伺えました。
 更に雇用環境の面では、結婚時に25万円、第一子出産時に30万円、第二子に50万円、そして3人目には100万円を支給するというユニークな制度を導入。若い社員も安定した生活が確保できる制度を整えています。手厚い研修や福利厚生が、過去5年、新人離職率0%の要因にもなっているということが分かりました。

  • 真剣な面持ちで齊藤部長の会社説明に聞き入る参加者
  • 社員の食生活を考え、自由に食べられるご飯やレトルト食品が用意されている

府中テクニカルセンター見学 社員同士の声掛けが大きな力となっている
 次に参加者は、本社から徒歩5分ほどにある府中テクニカルセンターを見学。所狭しとラックが並び、数多くのハードディスクなどが整理されていました。ここでは、それぞれの部品が正常に動くかを検査しているそうです。参加者が到着したその時、まさに数名の社員によって保守点検が行われていました。目を引いたのが、ただ機器をいじるのではなく、一つ一つの部品の作動について社員が意見を飛び交わせている姿です。参加者は興味津々の様子で聞き耳をたてていました。

  • 府中テクニカルセンターで業務内容の紹介を受ける参加者

執務室見学 大型サーバーが並ぶラボ
 次に本社のエンジニアの執務室に案内されました。北海道から九州まで全国に約500社のクライアントを抱える同社では、クライアントからの電話やメールで、不具合の状況を聞き取り、何が障害をもたらしているのかを探ります。不具合のある部品を客先に持参して修理し、正常に作動するかを確認するまでがエンジニアの仕事と説明を受けました。
 次に、大きなサーバーの保守点検が行われるラボを見学しました。ここには1台数億円というサーバーが数台並んでいました。クライアントと同型のサーバーの動作確認を繰り返し、いざ、クライアントから障害の連絡があれば、まさに手に取るようにクライアントの要望に応えられるように準備しているという説明がありました。

  • 大型サーバーの保守の説明に聞き入る参加者

座談会 入社を決めたポイントを質問
 次に社員2名と参加者が2つのグループに分かれて座談会を行いました。
 「入社を決めた理由は?」という参加者の問いに、「面接官と意気投合して、即決した」、「個性を尊重してくれる会社と見込んで」という回答がありました。また、「仕事の面白さは?」という問いには「難しい仕事も任せてくれるから楽しい」、「家庭と仕事の両立が実現できる環境がすてき」という答えでした。先輩社員のフレンドリーさに参加者も心をうちとけて話ができた座談会となりました。

  • 入社動機について尋ねる参加者

参加者の声

 参加者からは「業界の常識を破るビジネスで安定した業績を上げているのに魅力を感じた」という意見や、「社員同士が仲良く、若手社員の方々も楽しそうに働いている雰囲気に惹かれた」という感想が聞かれました。

まとめ

 1社目の多摩冶金は、金属熱処理の分野で航空機エンジンを制作、エスエーティは保障期間の切れたコンピュータシステムの保守点検と、2社とも特化した技術力で事業を展開する会社でした。今回どちらの企業でも若手社員が登場してくださり、働き方や就活に関してなど、様々な質問をすることができました。交流を通して参加者たちは、登場くださった若手社員の方々が楽しそうに仕事内容を語ってくださった姿から、いきいきと活躍している様子を感じ取ることができました。また、未経験であっても安心して学び、成長していける環境や、社員が働きやすいようにと工夫された取組があることを知り、社員を大切にする中小企業の魅力を感じていました。