<中小企業しごと魅力発信プロジェクト>

中小企業しごと魅力発信プロジェクト 東京カイシャハッケン伝 東京カイシャハッケン伝

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TOKYO SHIGOTO WAGON REPORTトーキョー・シゴト・ワゴン 実施レポート

しっかり育てる環境で、若手社員も活躍する企業特集

1社目 日商印刷株式会社/9名参加

 初めはクレジットカードなどのカード印刷を手掛ける日商印刷を訪問しました。秋葉代表から会社概要、事業内容、今後の展望についてお話をいただきました。その後、工場を見学し、社員座談会も行いました。

足立区に印刷工場を構える日商印刷

ツアー内容

会社説明 自動認識技術で事業を継ぐ
 日商印刷ではクレジットカードや社員証、IDカードなど個人情報に深く関わる印刷事業を行っているため、厳重なセキュリティー体制が敷かれ、社員はもちろん、訪問者も全員IDカードなしでは社内に入れないようになっていました。
 社内に通されると部屋の仕切りは全面透明のガラス張り。このガラス張りも社内の透明性を保つための工夫だといいます。
 「ガラス張りは、機密保持が欠かせない責任ある仕事をする以上、社員自身、やましいことはしない、させないというためのものであり、当社の姿勢を表すものです」と秋葉代表は開口一番、会社の物々しい雰囲気のわけを教えてくださいました。
 同社はカード印刷を主体に印刷事業を展開していますが、時代はキャッシュレス決済が主流となっていく中、次なる技術導入にも取り組んでいます。現在、同社が力を入れているのがRFIDに関する印刷技術。これは名称、価格、製造年月日などの情報を入力したRFIDというタグを商品などに貼り付け、その情報を読み込むシステムで、「近距離無線通信を用いた自動認識技術」という説明がありました。
 今回、参加者には訪問記念としてオリジナル証明書を発行していただけるとのことで、参加者一人ひとりの写真撮影が行われました。

  • カード印刷技術について説明をする秋葉代表

工場視察 オフセット、シルク、カード印刷の工場見学
 最初に案内されたのはオフセット印刷を行っている工場です。オフセット印刷は赤、黄色、青、黒の4色をかけ合わせた印刷方法です。そこに置かれた印刷物も見た目は写真ですが、ルーペで覗いてみると赤と青、黄、黒の網点がくっきりと見えました。まさに光の三原色を利用した印刷技術という説明に、参加者は一同にうなずいていました。
 次に案内されたのはシルク印刷の工場。これは版画のように型の抜けた部分に色を刷るという印刷方法です。実際に印刷している様子を参加者たちは興味深く見学していました。
 続けてカード印刷加工の現場を見学。カードの表面にラミネートを張り合わせてプレスする工程や、それを1枚のカード状に断裁する工程を順番に見て回りました。印刷が済んだカードにICチップを取り付ける工程では、ホコリ対策の一環でガラス張りのケースの機械で行われていました。また、印刷された用紙に磁気を張り付けるのは手作業というのに参加者は驚いた様子でした。更に、商品の検品も人の目視によるものでした。
 「全ての工程を機械化するのは可能ですが、人の手の方が確実という場面も少なくありません。検品は人の目でしか行なえない部分もあります」と加工部の味戸課長は同社の技術に自信をのぞかせていました。

  • オフセット印刷の説明を聞き入る参加者
  • カード印刷の工程を見学する参加者

社員との座談会
 次に参加者は、社員3名を交えての座談会を行いました。参加者から志望動機についての質問が投げかけられると「当社の特殊印刷技術に魅力を感じました」という答えが返ってきました。営業の仕事は具体的にはどんな仕事なのかという質問には「お客様への印刷技術の説明、商品の説明などが主な仕事です。印刷技術は日進月歩ですので、常に新しい技術について学び、お客様に伝えなくてはなりません」という回答でした。
 苦労話を聞かせてくださいという質問には「印刷機の取り扱いを先輩に丁寧に教わったにもかかわらず、全く動かせなかったという体験は忘れられません。先輩は察していたのでしょう、すぐに駆け付けて対処してくれて事なきを得ました。面倒見がよく、新しい業務にもどんどん挑戦させてもらえる、それが当社のいいところです」という答えでした。
 最後に秋葉代表から「学生の間にできるだけ大きな視野を持って、いろいろなことを見て、体験してください。そこで培った経験をもとに、志を持った人が多く社会に出てくることを期待しています」と参加者へのエールと訪問記念カードが送られツアーは終了しました。

  • 参加者からいろいろな質問が飛び交った座談会
  • 参加者全員にツアー参加証明書が手渡された

参加者の声

 「未経験でも1人で1つの工程を担当できるまで時間を掛けて育成するのは中小企業ならではの良さだと思った」「若手社員でも自ら手を挙げたり、適性によって、1つの会社の中でもいろいろな業務を経験することができ、スキルアップできると分かった」「一通り全ての印刷工程の業務を教えてもらいつつ、新しい印刷の可能性を探ることができることに魅力を感じた」という声が寄せられました。

2社目 ハネダ防設株式会社/9名参加

 2社目の訪問先は、大規模施設などの消火設備の設計、施工の事業を展開するハネダ防設でした。伊東代表から会社案内、事業内容説明、海外事業の新規市場についてお話をいただき、執務室視察、CADという作図ソフトを使っての消火設備の設計も体験。最後に若手社員を交えての座談会がありました。

新設したエントランスに掲げられたハネダ防設のロゴ

ツアー内容

建造物には欠かせない消火設備で事業を拡大
 建設業には総合建築と総合設備という大きな分野があります。総合建築は建物そのものを建てる分野で、総合設備はトイレやキッチン、空調、ガス、電気、消火設備、そして警報設備を設置する分野です。
 ハネダ防設は消火設備をメインとした総合設備分野の事業を展開。建造物には欠かすことのできない設備だけに、同社も数多くの大型店舗や大規模施設などを手掛け、その実績を着実に伸ばしていると伊東代表から説明がありました。
 また、伊東代表は建設業の実態と今後について、「現在は建設ラッシュで当社も忙しい思いをしていますが、少子化が進む現状から、建設業も先細りは必至。国内事業から海外市場を開拓する必要性に迫られているともいえます」と語ってくださいました。
 同社は2008年に設立以来、専門職の教育を強みに確実に事業を拡大させ、わずか10年余りでベトナムに現地法人を設立するまでに至りました。
 「事業を展開するうえで大事なことは人材育成です。入社後は消防設備士として活躍できるよう、一人ひとりがプロフェッショナルの意識を持って日々の業務に取り組んでいます。消防設備士の資格を使って諸官庁と調整を行うことは独占業務となるため、そうした人材の育成は事業拡大のスピードに合わせて急務といえます」
 伊東代表は会社と社員の成長についてそう話してくださいました。更に同社の事業に欠かせない消防設備士の資格についても詳しく説明してくださいました。
 「消防設備士は消防用設備の工事や整備には欠かせない資格です。この資格は、設計の基礎知識や消防システムのメカニズムの知識だけでなく、消防法という法律も学ばなければなりません。従って文系、理系といった隔たりはない資格といえます」
 伊東代表のそうした説明に文系参加者も関心を高められたようでした。

  • 伊東代表の会社説明に耳を傾ける参加者

社内見学 活気あふれる社内、憩いのスポットRICU
 伊東代表の案内で参加者は社内見学を実施。案内された部屋にはCADを備えたパソコンや大判の設計図を出力する大型のプリンターが設置されていました。社内は活気に満ち、社員たちは図面をチェックしたり、消火設備がぎっしりと描きこまれた図面から見積書を作る作業をしていました。複数の部署が同じフロアにまとまっており、客先と電話でやり取りを交わす営業部や管理部なども順に見学してまわり、エントランスホールに案内されると、そこにはいざという時に取り出す消防ホースや消火器が収納されている消防設備が供えられていました。また、ホールの天井には火災感知器も完備されているといい、まさに安全のモデルルーム。参加者は天井を見上げ、感嘆の声を上げていました。更に、エントランスホールの奥を見ると、飲食ができるカウンターテーブルの「RICU(リキュウ)」が設けられていました。このネーミングは社員から募ったものだとのエピソードが紹介されると、参加者はそこに社員の意見が通る社風を感じ取ったようでした。
 「ここでは朝食が提供されています。おにぎり、サンドイッチ、果物などが揃っています。また、大型テレビは東京オリンピック・パラリンピックを社員と一緒に見ようと設置しました」と伊東代表が社員の憩いのスポットを紹介してくださいました。

  • 伊東代表が引率して社内見学
  • 社員の声から設置されたRICUを見学

ワークショップ 設計ソフトCADに挑戦
 次に参加者は、用意されたパソコンを使い、CADという作図ソフトで消防設備のパイプ設置の図面作成に挑戦しました。
 「皆さんが作成した図面がもとになって3Dの立体図面が完成しますので、慎重に図面を引いてください」という伊東専務の言葉に参加者は、緊張した面持ちで作業に掛かりました。
 モニターに映し出されたスプリンクラー用のパイプの図面をマウスで延ばしたり、曲げたりして図面を作成。それぞれにパイプの高さなどの数値を入力して、パイプが建物の柱や梁に接触しないように仕上げなくてはなりません。
 最初は思ったようにソフトを操作できなかった参加者たちも、伊東専務のお手本や、社員の手助けもあって図面を仕上げることができました。
 作成した図面を3D図面にしてチェックしてみると、柱や梁にパイプがぶつかっている箇所を発見。再度、図面に戻り、不具合のあった部分を修正し、3Dでチェック。見事にスプリンクラーパイプが図面通りに配管されている様子に、参加者は声を出して喜んでいました。
 「この作業を現場の状況に合わせて、一つひとつ仕上げていくのですが、慣れてくればスムーズにできるようになりますから安心してください」と伊東専務の言葉に参加者はほっとした様子でした。

  • CAD体験で作成した図面を3Dでチェックする参加者

社員との座談会
 最後に参加者は、若手社員2名を交えての座談会を行いました。参加者から志望理由について質問されると、「前職は飲食業で、この仕事についての知識もなく、まったくの未経験だったのですが、資格が習得でき、将来が見えるという魅力にひかれて入社しました」との返答。仕事の面白さについて問われると、「図面から消火用の配管や部品の数を拾い上げて価格を積み重ねて仕上げていく見積作成の業務は、作業が複雑で、時間が掛かりますが、仕上がった時の達成感は何とも言えない喜びです」ということでした。社内の雰囲気についての質問には、「それぞれの部のチームワークが良くコミュニケーションも活発で、分からないことは先輩にすぐに質問できるので、仕事がとてもやりやすいです」という働きやすさをにじませる回答もありました。
 「企業の採用面接は主に人柄を見るものです。気負わず、自分の良さを思う存分アピールするといいでしょう」と伊東代表からのエールの言葉をいただき、ツアーは終了しました。

  • いろいろな質問に社員が丁寧に答えてくれた座談会

参加者の声
 参加者からは「未経験から入社した方々がCADを使いこなしたり、見積りを作成したりしているところを実際に見学し、育成に力を入れているという社長の言葉を実感できた」「社員が能力を磨くことに対して、会社から補助が出るなど、企業が社員の成長を後押ししていて、自己の成長につながると感じた」「お互いを尊敬し、信頼し合っているからこそ、若手社員でも仕事を任せてもらえて、会社としても成長できる理想的な職場だと思った」という感想が聞かれました。

まとめ

 1社目の日商印刷は、カードに特化した印刷事業を展開し、2社目のハネダ防設は安心、安全な生活を守るための事業を展開する会社でした。どちらの会社でも、風通しの良い社風の中で若手社員が積極的に業務に取り組む姿や、時代や環境に合わせて事業を展開していく中小企業の力強さに参加者たちは魅力を感じ取ったようでした。