女性が活躍できる環境で一点物の注文家具を製作。 3Dデータを使用した複雑な造形物を手掛ける
<カイシャの特徴>
●事業内容:注文家具や立体展示物を製作
●働く環境: 子育て中の 女性も働きやすい風土
●仕事のやりがい:思い通りの製品を仕上げる 達成感
●育成制度: 先輩に学びながら自分流を探す
オフィスや店舗の一点物の家具や、機械を使った立体展示物を製作
オフィスや店舗、ホテルなどで使われる、一点物の家具を製作する八槻木工所。主な顧客は内装会社や設計会社で、確かな技術力による品質の高さからホテルのスイートルーム、ブランドショップ、高級レストランなどに備える什器(じゅうき)の注文も多い。
同社の大きな特徴は、2D、3Dのデジタルデータによって自在に動く木材加工機を活用して複雑かつ細かな加工を実現していること。その技術を生かし、テーマパークに置かれる立体展示物の製作などにも携わっている。
「木材の加工は機械を使えば簡単にできるというものではなく、微妙な調整が必要です。これまでの挑戦の積み重ねで、手彫りの細かな細工とほぼ同じ物が作れるようになってきました。IT技術によって優れた手仕事を補完することができるのではと考えています」(鈴木代表)
例えば神社仏閣の建築様式に見られる木工の飾りを3Dスキャナーで数値化すれば、機械で同じ物が作れるという。3Dデータは様々な業界に広がっているが、実際に製作を担えるところが見つからない事業者や個人から特殊な加工物の製作依頼も増えており、「今後どのような可能性が広がるのか、自分自身も楽しみです」と鈴木代表は話す。

社員10人中4人が女性木工職人として活躍。子育てと両立する社員も
同社では社員10人のうち4人が女性で、木工職人として活躍している。入社10年目、木工職人の飯島さんは、2歳の子どもを育てながら短時間勤務を行っている。
「出産を経て復職しました。社内には二人の子どもがいる先輩や産前産後休業中の後輩などもいます。子どもの体調が急に悪くなったときなども早退しやすく、困ったときはフォローしてもらえますし、子育てをしながら仕事を続けることに障壁は感じません」
また同社には、勤務時間外に任意で、自由に会社の材料や機械を使って自分や家族、友人のために家具を作れるというユニークな制度がある。
「自分にとってこの制度はすごく魅力で、自宅の家具は全て自分で作りました。最新作は4歳になる子どものための木製バイクです」(入社12年目、木工職人の掛尾さん)

手作業と機械の活用、どちらも思い通りの物が完成するやりがいを感じられる
「育児休業後は、木材加工機に入力するデータを調整する役割へキャリアチェンジし、テレワークで働く選択肢もありましたが、復職して複雑な曲面のカウンターテーブルを完成させた際に、手仕事の楽しさを再発見しました。今は家具製作を追求したいと思っています」と話す飯島さん。 自分でも納得のいく家具を作り感謝されるのは、何ものにも代えがたいやりがいになっているという。
一方、機械操作を担当する掛尾さんは、「木材加工機は手作業で得た知識や経験をもとに微修正を加えなければ思い通りの物は作れません。複雑な造形物が仕上がったときの充足感は格別です」と話す。
自身も木工職人である鈴木代表は、この仕事のやりがいを次のように語る。
「お客様から、『こういうものが作れないか』と相談されることが多いです。自分の知識や技術で要望に応えられたとき、この仕事をやっていて本当に良かったと感じます」

若手は皆で育てる。気兼ねなく先輩に質問し、自分の技術を磨く
同社は、チームや階層を分けることなく、フラットな体制で事業を運営してきた。しかし2024年から、会社の規模拡大と100年企業を目指すため、リーダーのポジションを作ることによる組織改革を進めている。現在は不定期でリーダー会議を行い、社を代表するような意識を持ってどう行動すべきかの研修を行っているという。
「今は少人数なので、若手は皆で育てるという雰囲気になっています。今後も基本は変わらないものの、チームごとにさらに手厚く育てていく体制づくりをしていきます」(鈴木代表)
「昔の職人の世界では、先輩の背中を見て学べなどといわれてきましたが、当社では先輩に何でも気兼ねなく質問できますし教えてくれます。ただ、人によってやり方が異なるので、いろいろな考えを知り、自分流の家具の作り方を見つけることが大切だと思います」(飯島さん)

代表からのメッセージ
自分の思いを形にした製品が長く愛されることが木工の一番の魅力。日本の木工業には様々な可能性があり、若い方の活躍を期待しています。

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●第39号 (2024年12月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。