鰹節(かつおぶし)を通して顧客とつながり、320年超の伝統を受け継ぐ若手が未来を切り開く
<カイシャの特徴>
●事業内容: 鰹節を中心にふりかけや調味料など加工食品を製造・販売
●育成制度: 育成制度とチャレンジできる社風が、若手のやる気を支援
●働く環境: 育休取得後の復職率100%。男女問わず、誰もが働きやすい環境を整備
鰹節やだしを使った各種食品を製造・販売。SNSを活用した広報も展開
鰹節とだしを主力商品として、製造から販売まで展開しているにんべん。1699年に創業し現在まで、核となる商品は一貫して鰹節だという。
「当社の軸は、江戸時代から変わらず鰹節です。同じことを続けるのではなく、時代に合わせて変化することが大事ですが、当社もまた、幾度かの革新を経て今に至っています」(髙津社長)
革新から生まれた商品の一つが削り節の「フレッシュパック」。デリケートな素材をそのまま個包装するという、不可能と思われた課題を技術力によって解決し、大ヒット商品へと導いた。
ヒットの裏には、常に消費者のニーズに向き合ってきた同社の姿勢がある。
「日本橋本店の一角には『日本橋だし場』というだしそのものを味わっていただく体験型のスペースを設置しています。お客様の声を直接聞くことができる貴重な場となっています」(髙津社長)
鰹節・だしを未来に受け継ぐために、鰹節そのものの販売に加え、様々な事業を展開している同社。
「だしを使った総菜や弁当など中食事業への進出や付加価値商品の開発、即席麺や冷凍食品の大手企業とのコラボ商品の開発など、鰹節・だしをさらに広めるための事業を国内外で展開していきます」(髙津社長)
Z世代に向けた商品づくりも意識しており、SNSの積極的な活用や、「にんべんだしアンバサダー」との共創による商品開発などにも注力している。
320年余の歴史を持つ同社では、江戸時代に「3つの革新」があったという。
1つ目は「現金掛け値なし」。当時の常識であった掛売りをやめ、相手により値を変える掛け値から定価販売を導入した。2つ目は「商品券」。銀製の商品券を販売し、先に売上を確保。3つ目は「鰹節製造技術の革新」。それまで1回程度だったカビ付けを複数回に増やすことで日持ちと品質を向上させた。
いずれも、当時常識と思われていたことを突破してブレイクスルーに至った事例。このように「当たり前」から「新常識」に至る革新の意気込みは、今も同社の根幹にある。近年では「日本橋だし場」はじめ、「日本橋だし場 はなれ」(飲食店)や「日本橋だし場OBENTO」(弁当専門店)、「一汁旬菜 日本橋だし場」(総菜専門店)など、多様な経営形態への展開で挑戦を続けている。
ツールや制度を導入し 若手のやりがいや意欲を積極的にサポート
同社では入社後の約半年、店舗での販売、焼津の協力工場での実習を含む新人研修を行っている。配属された後も、悩みを抱えることなく、生き生きと働けるようにオンライン支援ツールを導入。新入社員が日報やそのときの気持ちなどを記録すると、上長やメンターが随時フォローをしてくれるという。
また、キャリアアップのサポートとして、約70の資格から社員個々の業務に必要な資格を取得するための支援制度や外部研修受講の機会があり、若手社員の成長を後押ししている。
ほかにも社員のエンゲージメントを可視化する試みもされており、社内の風通しは非常に良いという。例えば、年に1回社員が提案や挑戦したいことなどを自由に書くことができる「自己申告書」は、髙津社長自ら全社員の書類に目を通す。実際に、男性社員の育児休業取得奨励など、これによって強化された取組などもあるという。
「当社は長い歴史を基にした安定感がありつつ、挑戦もできる社風です。例えば、今まで売上げが伸び悩んでいた地域で営業を担当したときには、自分の企画を上長も周囲も応援してくれて結果を出すことができました。将来は商品開発にも挑戦したいです」(入社4年目、家庭用事業部の豊田さん)
長く働き続けるためのきめ細かなフォロー体制。男性の育休取得実績も
育児休業取得後の復職率が100%という同社は、休業前後の個人面談の実施とともに、産前産後休業・育児休業取得時に社員が孤独を感じないよう自宅からいつでも社内グループウェアにアクセスできる仕組みを整えているという。
「復職する前は、子どもの発熱などで急な早退もあるかもと、不安を抱えていました。個人面談時に相談した結果、配属先を配慮してもらうことができ、現在は毎日安心して働いています」(入社5年目、直販事業部の永井さん)
男性の育児休業取得者もいるという同社。社員の誰もが、長く安心して働くことのできる環境が整っている。
社長からのメッセージ
伝統的な食品を新しい形で伝えていきたいと思っています。これからの時代に合った新しい伝統を生み出せる人と共に働きたいです。
読者からひとこと
食卓も社員の働き方も豊かにできる会社 鰹節を起点に、調味料や総菜など幅広い活用方法を研究し続ける姿勢が素晴らしいと思いました。また、会社のトップが全社員の意見を確認することができるのは、中小企業だからこそできる細やかなケアだと思います。風通しも良さそうだと感じました。
●第31号 (2022年12月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。