建設現場や造船所で、金属素材を切る溶断機器などに使われる「流体継手」。例えば、ガスが通る管とホースとをつなぎ、ガスの逆流を防ぐなどの重要な役割を担っている。
　三輝は、日本初の流体ガス用ワンタッチ継手を生み出し、これまでに1,500種類以上の継手を製品化している。
　2009年には継手のノウハウを生かし「詰め替えそのまま」というPB（プライベートブランド）商品を開発。これは、シャンプーなどの詰め替えパウチに取り付けることで、ボトル容器に移し替えることなくそのまま使えるという商品で、東京都ベンチャー技術大賞の他、複数の賞を受賞している。
　「完璧な密閉性が求められる流体継手を作る技術力と新しい発想で誕生したのが『詰め替えそのまま』です。2008年に展示会で発表した際に注目を集め、これは売れると確信しました。翌年から販売をスタートしましたが、多くのテレビ番組や雑誌などで取り上げていただきました。年間売上３億円超の大ヒット商品となっています」（阿部社長）
　高い技術力と発想力で製品を生み出す同社は、平成17年、27年、令和２年度に、大田区の「優工場」にも認定されている。強みは、企画・開発から設計製造・検査・販売まで、全てを自社で行う一貫体制が整っていることだという。流体継手は用途や溶断する金属の種類によって形が変わり、また、同じ用途であっても顧客の要望が多岐にわたる。そうしたニーズに耳を傾け、しっかりと顧客に寄り添ってきたことで、1,500種類以上の製品を生み出し、新たな製品の開発にもじっくりと取り組むことができると阿部社長は話す。
　「『詰め替えそのまま』は開発に３年かかりました。社内、社外へ認知を広めることも苦労しましたが、何事にもチャレンジすることが当社の企業姿勢です」

　入社後は、配属先の先輩社員が作成したマニュアルとOJTをもとに、手を動かしながら仕事の手順を覚えていく。
　「全く異なる業種から転職し、一から知識を付けていきました。どの先輩社員にも聞きやすい環境でしたし、つまずく度にアドバイスをもらいました。現在は後輩たちに、分からないことは恥ずかしいことではないと伝えて、分かるまでしっかりと教えています」（橋本統括工場長）

　全社員が楽しく仕事できる会社でありたいと思っています。若手には、新しい事業部を作ってもらいたいと考えています。失敗を恐れずにチャレンジしてください。