佐山製作所は1911年の創業以来、椅子を主力製品に官公庁の応接セットや、高級飲食店の家具の製造、販売を担い続けてきた。成長を支えているのは、歴史の中で培われ伝承されてきた技術力と、新しいものを生み出すためにチャレンジしていく実行力だと佐山代表は話す。
　中でも20年ほど前から注力しているのが高級ホテル向けの家具の製造・修理。現在は多くのホテルが同社の家具を採用しているという。
　「私は前職で旅行会社に勤務していました。そのときにホテルの家具の製造・修理に需要があると感じ、当社で実現しました」（佐山代表）
　近年は、得意としてきた革張りや布張りの椅子にとどまらず、木の質感を感じられる椅子も製造するなど、商品の幅を広げる努力も怠らない。
　さらに、家具を本格的に修理する前にはクリーニングを行ったり、メンテナンスで簡単な修理や塗装をして経年劣化を防ぐなど、顧客の要望に細かく応える工夫もしている。
　昔ながらの技術に頼るだけではなく、現代の素材に合わせた技法や発想を取り入れることが、同社の大きな強みとなっている。
　コロナ禍によって、自宅で過ごすことが増えた昨今、広い間取りの家に引っ越したり、家財を見直したりする人が増えているという。
　こうした状況を受けて同社では、個人宅向けの高級家具の販売を進めている。始めてみると、日本に住む外国人からの問合せや需要が思った以上に多く、インターネットで、英語対応のサービスも開始した。
　「内装デザイン会社から仕事を請けて、マンションのモデルルームに設置する家具の製造なども始めています。新たな需要を開拓することで企業としての成長があると考えます」（佐山代表）
　今後、ホテル向け家具に加え、個人向け家具が、同社の事業の柱の一つとなるように、全社員で力を合わせている。

　入社すると、まず栃木工場で３カ月間、しっかりと家具づくりの基本を身に付ける。
　「修理する椅子の座面を剥がすだけでも時間が掛かり、大変だと実感しました。椅子の素材や構造の基本知識が身に付き、その後の見積り作成の際にも役立っています」（髙橋さん）
　その後はOJTで先輩に同行しながら、家具の引取りや納品などを通じて仕事の流れを覚えていく。
　また、毎月のミーティングでは、その月にあった事例や、それぞれが業務で感じたことを話し合う「気付きの時間」を設けている。
　「一人で経験できることは限界がありますが、全員で情報を共有することで、自分自身が経験していないことでも適切に対処できます。発表することで反復して覚えることもできますし、個人の成長につながります」（目黒さん）
　さらに、取得したい資格や受けたい講習などがあれば、相談の上、会社が補助金を出している。
　「基本となる図面を作成し、工場に連絡するのも営業の役割。スムーズに図面を書くためにもCADの使い方を学ぶ講習を受講したいと考えています」（髙橋さん）