社員のライフイベントを尊重する、プラスチック板加工のリーディング企業
<3つの特徴>
●事業紹介:水族館の巨大水槽などを手掛ける技術力
●育成制度:仕事を任せてもらうことで若手が成長
●働く環境:男性社員の育児休業取得の実績多数
水族館の水槽など 高度な技術が必要な加工に業界も注目
暮らしの身近な場所で、様々な用途に使われているアクリル板。最近では、感染症予防に向けた飛沫感染対策用品としても頻繁に見かけるようになった。
こうしたプラスチックの加工を手掛けるシンシは、都内でも数十社程度しかないという板状プラスチック加工を専門にするメーカー。熱加工したプラスチックを金型に入れて成型するインジェクション加工は大量生産に向いているが、同社が手掛ける板加工は少量でバラエティに富んだ製品ラインナップが特徴だという。
特に定評があるのは同社の技術力。水族館でよく見られるカーブした水槽やドーム型の天井なども製造しており、全国の業界から注目を集めている。
「国内の水族館で使われている大型水槽の約60%は、当社の手掛けた製品です」と、加納社長は誇らしげに語る。
大型の製品も手掛けるようになったことで、同社は大田区の本社工場のほか、1992年に北関東工場を竣工。同工場内に水槽工場も増設した。
高度化する顧客からのオーダーに応え続けるとともに、今後は、医療福祉や環境、防災・減災関連など、さらに社会的意義の高い製品にも挑戦していきたいという。
2022年に設立70周年を迎える同社は、この分野の草分けでもあり、プラスチックを「成形する、切る、磨く、貼る」という4つの技術を備えた数少ない企業でもある。
水族館の水槽で使用されている巨大なアクリル板は、厚さが50cm以上にもなるというが、製造するには複数枚のアクリル板を貼り合わせる「重合接着」という技術が必要になる。この技術を持っているのは、国内では同社を含めて2社だけという。
「実はガラスよりアクリルの方が透明度が高いのです。透明度を10段階で表すと、ガラスは7、アクリルは9といわれています。当社の技術で、50cmという厚みを感じさせない透明度を実現しています」(加納社長)

工場研修で知識を習得。製品理解を深め仕事に取り組む
新卒の採用を実施するようになったのは3年前からという同社。入社した若手社員は、社内の各部署で活躍し、採用の成果は目に見える形で出ているという。
入社後は、営業職も生産技術職も北関東工場で3カ月間の研修を行い、自社製品に対する理解を深める。その後は配属先で先輩社員と行動を共にし、OJTで業務を身に付けていく。
入社3年目、営業部の大田さんは、同社にとって初めての新卒の女性営業職。現在は、先輩社員に業務や技術について教わりながら、自分らしい営業スタイルを確立している最中という。
「受注後もお客様と製造部の間に立って仕事を進めていける点がやりがいです。裁量を持って仕事を任せてもらえるので、今後は、アパレルの店舗用品など女性ならではの感覚を生かせる案件を増やしていきたいです」

男性社員も数カ月単位で 育児休業を取得
社内活性化のため、若手社員で構成されたのが「絆と採用プロジェクト」。具体的な事例の一つが、プロジェクトメンバーが社員一人ひとりに取材する「インタビューリレー」。原稿は社内報に掲載され、社員交流のきっかけづくりもなっているという。
また、ライフ・ワーク・バランスの充実にも力を入れる同社では、複数の男性社員が育児休業を取得しており、入社16年目、製造部技師の江井さんも、つい最近3カ月の育児休業から復帰したばかり。
「コロナ禍での出産だったため、遠方にある実家にサポートを依頼することもできませんでした。この制度を活用したことを、家族もとても喜んでくれました」
江井さんは、後輩の男性社員にもこの制度を利用してほしい、その際は仕事をサポートしたいと話す。
女性にとっても働きやすい職場環境というのは大田さん。
「ほとんどの女性社員が、出産や育児を経て業務に復帰しています。ライフイベントの変化にきちんと対応してくれる会社なので、安心して働くことができます」

当社の自己PR
社員同士の仲の良さが自慢です。大きな組織だと人間関係が複雑になりそうですが、中小企業ならではの距離感で、すぐに相談できるアットホームな環境です。また、仕事に慣れれば自分でスケジュール管理できますし、有給休暇を取得しやすいのも当社の良いところ。学生時代の友人と会うと、うらやましいと言われることが多いです。(大田さん)


●第25号 (2021年6月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。