続いて訪問したのは「医療・福祉」分野に出展している設立4年目のベンチャー企業。生鮮食品や医薬品などの輸送に用いられる保冷剤を製造・販売するジャパンコールドチェーンです。参加者にはなじみのない業界でしたが、代表自ら対話を交えながら取組を説明してくださいました。
「氷の温度は何度かわかりますか?」との問いに「0度」と参加者。続いて、「ドライアイスは?」と質問されると参加者は口を閉じてしまいました。代表はその様子を見届け、「ドライアイスは二酸化炭素を固めて作られ、マイナス80度になる。だから、アイスクリームや冷凍食品も溶けないのです」と解説。「なるほど」と参加者から声があがりました。
代表によると、ドライアイスは様々な問題を抱えていると言います。「第一に、原料供給が不安定で品薄状態。更に、二酸化炭素を固めて作られるため環境負荷も大きい」とのこと。そこで同社は、水と食品添加物を原料にした保冷剤を開発。さらにドライアイスを冷凍するにはマイナス30度にする必要がありますが、同社の保冷剤はマイナス18度で冷凍可能。そのため省エネ・コストダウンにつながっているということです。
「この製品のもう一つの自慢が、冷凍庫で凍らせて再利用できるところ。つまり、環境にも人にも優しい保冷剤なのです」と熱く語る代表。そんな代表に参加者から「なぜ起業しようと思ったのか」といった質問が投げかけられました。「北極が溶けている、台風が多いなど、明らかに気候がおかしい、なにかしなければという思いが抑えきれなかった」と回答。「かっこいい」と参加者から感想があがりました。
最後に今後の展望について、「環境意識の高い消費者が増えている昨今、地球に優しい保冷剤として、家庭向けに売り出したい」とお話してくださいました。高い志を胸に、アイデアと技術で世の中にないものを生み出し躍進するベンチャー企業の魅力に触れたひとときでした。
3社目の訪問先はIT系のベンチャー企業。日本人の死因の第一位とされる「がん」の早期発見を目指し、X線検査を支援するシステムを開発・販売する、アイエスゲートです。X線検査では、右を向く、左を向く、座る、立つといった動きに伴い、別室にいる臨床検査技師がマイクから指示しています。
しかし、外国の方、聴覚障がいのある方、耳が聞こえづらい高齢者などは指示を受け取れず、検査に時間が掛かる、更には検査精度が下がるといった課題があるといいます。そこで同社では、技師がタブレットを用いて「右を向く」などのアイコンを押すと、検査室にあるモニターにイラストやテキストが表示されるシステムを開発。全国12施設、18台を導入。説明を省ける、技師の経験を問わず一定した検査を提供できる、早期発見や治療につながるなど評価を得ているといいます。
更に姿勢を問わず指示が伝わるよう、めがねのレンズ部分に映像を映せるスマートグラスの開発にも注力。試着した参加者は映像が流れると「おお!すごい!」と声をあげました。
また、社会貢献活動として、手話や字幕付きのがん教育動画を制作し、自治体などに提供しているとのこと。その理由について、「がんに関する正しい知識を得てほしい。私たちは、がんで亡くなる人を減らすことに本気で取り組んでいます」と熱い胸の内を語ってくださいました。IT技術で人の命を救うことに全力で取り組む社員の話に、参加者は真摯な態度で聞き入っていました。