子育てと両立しやすい環境で、障がい者の日常生活から就職までを支援
<3つの特徴>
●積極的な社会参加を促す障がい者支援
●業務経験を積みながら資格取得を目指す
●多くの女性職員が子育てと仕事を両立
6つの事業所で障がい者支援事業を展開
げんきは、障がい者とその家族の生活を支え、社会との懸け橋の役目を担う施設として2012年に設立された。品川区に6つの事業所を展開し、障がいのある子どもの預かり事業やグループホームで生活する障がい者の介助をする生活支援事業、障がい者の就職をサポートする就労支援事業などを手掛ける。
「私たちの使命は、障がいがあったとしても、その人らしく生きていける社会を実現することです。一人ひとりの強みを生かせる企業を探し、訓練をする一方で、地域の方と交流して、互いの理解を深めることも行っています」
そう話す杉本理事長は、大学で学ぶ中で、障がいのある人の力になりたいという思いを高め、施設の設立に向け積極的に活動してきたという。
同法人の前身は、2001年に設立されたNPO法人ぴゅあ・さぽーと。杉本理事長が同NPOを設立するきっかけとなったのは、障がいのある子どもを持つ母親たちの活動だったという。子育てに苦労している母親たちがお互いの子どもを預かり合っているという話を耳にし、互助活動をより発展させるためには組織化が必要と、杉本理事長と母親たちが意見を交わし、設立されたという。
現在、同法人には、そうした杉本理事長の考えに共感した職員58名が集い、うち48名を女性が占め、子育て経験者も多いという。
「食事支援などをはじめとした業務は、私たちの日々の生活の延長線上にあるものです。家族に接するように、利用者に寄り添うことが大切です」(杉本理事長)

実務で経験を重ねながら 研修と資格でスキルアップ
入職すると、各事業所を回って生活支援、就労支援などの業務の基礎を学んでいく。3カ月後には新人スタッフそろっての全体研修が開かれ、法人の理念や福祉の基本を学ぶ。未経験者であってもこうしたOJTや研修で知識・技術を深め、自信を持って現場に臨めるようになるという。
同法人では、社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士、公認心理師などの資格取得を推奨しており、働きながら知識を身に付けていけるという。資格を取得してスキルアップした際には、リーダーとして責任ある立場が任され、キャリアの幅を広げていくことができる。
他にも、職員は東京都や品川区が開催する研修などに参加してスキル向上を図っている。
入職2年目、「げんき品川就労移行支援」で、職業指導員を務める杉木さんは、障がいの特徴を理解したいと外部研修に参加したという。
「研修は、障がい者の就労支援の計画を考えて発表するという内容でした。理解が深まったのはもちろん、実践的な内容でしたので、すぐにでも業務に生かせそうです」

「短時間正職員制度」など働き方の多様化を促進
職員の働き方の多様性を尊重している同法人では、子育て中に限らず、期限なく短時間勤務ができる「短時間正職員制度」を導入している。
育児短時間勤務制度もしっかりと運用され、職員同士の協力体制も整っていると話すのは、入職7年目、「障がい者就労支援センターげんき品川」の堀越さん。
「産前産後休業と育児休業を2度取得し、育児短時間勤務制度を利用しています。周りにも子育てをしている方が多く、お互いにフォローする風土があるため、ストレスなく制度を利用しています」
同法人で働く職員が口をそろえるのが、前向きな言葉や声掛けが多く、人間関係のストレスがないという社風。杉木さんも、入職動機は魅力的な社風だったと語る。
「職員が『ありがとう』、『助かります』と声を掛け合う姿が印象的でした」
こうした社風の良さを、日々、働く中でも実感しているという。
「支援の仕方で先輩から注意を受けるときも『こうするともっと良いよ』、『次はこうやってみたら』と優しくアドバイスしてくれます」と語る杉木さんは、先輩たちのように、後輩の指導に当たれるようになるのが目標と目を輝かせる。

役員からメッセージ
スキルとともに、利用者に寄り添う心が大切
当法人の仕事は障がい者の自立をサポートすることです。専門知識や技術はもちろん必要ですが、相手の身になってものを考えるということがとても重要です。例えば、できないことにただ手を差し延べれば良いというものではありません。時と場合によっては、あえて手を出さずに見守るということも必要です。利用者の中には自分の感情を表に出すことが苦手で、体調や気分の変化を伝えられない人もいます。そうした人たちの体調や言葉に表せない思いを注意深く見守る観察眼も求められます。


●第22号 (2020年10月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。