インフォレントの主な事業は、音楽教室やダンス教室の先生に防音スタジオを長期的・定期的に貸し出すスタジオの運営だ。例えば、A というスタジオを、月曜の午前は○○先生、午後は△△先生、夕方は□□先生にそれぞれ貸し出し、空き時間がないよう効率的なスタジオ運営を行う。都内約50か所のスタジオ運営に加え、新たなスタジオの企画、設計、施工や、防音マンションの借上管理、仲介、買取、イベントの企画運営なども行う。
　インフォレントの事業の特徴は、ただスタジオを貸し出すだけでなく、スタジオを借りる先生方の教室運営までサポートする点だ。
　工藤社長は「先生方の中には、芸術的な才能を持っていても、ビジネス的な感覚が弱いという方もいらっしゃいます。そうした方をいかにサポートするかも、私たちの仕事なんです」と述べる。
　そのためインフォレントのPR 文は非常に具体的だ。例えばキッズ向けダンス教室としてスタジオを貸し出したい場合、「スタジオを２時間半借りれば45分のバレエクラスを３回転でき、1クラス10名、延べ30名の教室を実施できます。月４回のレッスンで、月謝を7,000円とすると、売上げは21万円になります。貸しスタジオの原価は3万円前後。生徒を60名集め、レッスンを週２回にすれば、月収約38万円が達成できます」といった具合に、実際に教室を運営した時のイメージをしっかりと伝えることを大切にしている。ビジネス感覚が弱い人が多いという先生方に、ここまで明確に数字を提示して教室運営をサポートするところが、他のスタジオ運営会社とインフォレントが大きく異なる点だ。

　何でもできる人材を育成するために、同社では月に1回、全社研修を行っている。取材当日に行われていた研修は「アプリを使った、スタジオの間取り紹介動画の作り方」についてだった。動画一つで教室の先生方の集客をサポートできるとあって、参加者は全員熱心に耳を傾けていた。
　また、メッセージアプリを使った日報も社員教育に役立っている。社員は毎日の日報をメッセージアプリで工藤社長に提出することを義務付けられている。それに対して工藤社長は丁寧な返信やアドバイスを送り、それがオンラインでのOJT（日常業務の中でのトレーニング）として機能している。
　「結局、私が社員にやってもらいたい仕事は『経営』なんです。一人ひとりがスタジオの経営者になれるように、お金の計算の仕方から広告宣伝、そしてスタジオの作り方まで、全て学んでほしいと思っています」（工藤社長）
　事業の一部だけでなく、経営まで学べるのが中小企業の魅力だ、と工藤社長は笑顔を見せていた。