世界でオンリーワンの装置を開発。科学技術に貢献する人材を育て続ける
<3つの特徴>
●ニッチな分野を独自技術で開拓
●1年間の長期研修で基礎を養う
●子育て中の社員が多く理解ある環境
化合物の分離装置を開発し 科学技術の発展に貢献
1965年に設立された日本分析工業は、化合物を分離精製する「リサイクル分取HPLC」を主に大学や企業の研究機関に向けて開発や製造、販売している。同社が世界に誇るこの分離装置は、複雑に結合した化合物から不純物を取り除き、特定の化合物を取り出すためのものであり、同社の売上げの約6割を占めている。取り出された化合物は、その後、電気自動車や液晶ディスプレイといった工業製品から、バイオ食品や新薬など、化学分野の最先端製品の開発につながる可能性があり、この装置は様々な製品開発に欠かせないものといえる。その他、同社が開発した「キューリーポイントパイロライザー」は交通事故現場のタイヤ痕などから車を特定するなど、警察の科学捜査などで活躍している。
そんな同社の強みとなっているのが、もともと高い技術を持つ装置を時代にあわせて改良し続けている姿勢。
「大学の先生からのヒアリング結果を営業が持ち帰り、開発現場にフィードバック、そして次のバージョンへとつなげる好循環が根付いています」(大栗社長)
分離しにくい「疎水性」の化合物を分離させるノウハウも強みだ。同業他社が敬遠する「疎水性」に商機を見出した同社は1972年から、この分野に挑戦。取引先は2,000を超え、韓国、中国、ヨーロッパ諸国からの注文も増えているという。
さらに同社では創薬分野で使われる装置の開発にも力を注いでいる。薬品を溶かすには、ガソリン、ベンゼン、トルエン、クロロホルムといった疎水性の化合物が溶媒として用いられている。さらに、創薬の種類によっては、1日1キロというように大量の化合物が必要とされる。こうした分野で効率的に目的の化合物を分離精製できる装置を開発すれば、大きな需要が見込めるとあって、同社は1回100グラムの化合物を取り出せる大型装置の開発に着手。1号機を完成させ、目下、改良を進めているという。
「創業以来『自らの手で生み出す』ということを大切にしてきました。今後もオリジナリティを追求した装置を開発し、科学技術の発展に貢献していきたいです」と大栗社長は、同社の未来について意気込みを語る。
長期研修や挑戦を応援する 環境でスキルアップを目指す
新入社員は営業、製造、開発、販売、分析の5部署を3カ月掛けて回り、仕事の流れを覚える。その後1年程度は、配属先の先輩社員から実務を教わる。開発職であれば、装置を分解し、組み立て、動作確認を重ねながら構造を理解。図面作成や設計にも取り組み、5年を掛けて新装置の設計を担えるまでに育成するという。
技術者としてスキルアップに欠かせない学びが期待できる外部セミナーや、新技術に触れられる展示会への参加も推奨している。
「開発という新しい試みに挑戦するには情報収集が欠かせません。展示会で最先端の研究成果からヒントを得ています」(入社10年目、分析研究室、柄澤室長)
さらに、同社には社員のチャレンジを応援する社風がある。入社10年目、製品検査や発送を担う製造部の室井主任は通常業務と並行して設計を学んでいる。
「上司に設計にも携わりたいと伝え、製品改良や図面設計に関わらせてもらっています。装置を小型化し、より使いやすいものにするのが目標です」
アットホームな社風で 仕事と子育てを両立
社員同士の距離が近く、相談しやすいのも同社の特徴の一つ。
「装置に不具合などがあれば他部署の社員であっても気軽に相談に乗ってくれるので、何ごともスピーディーに解決できます」(柄澤室長)
また、男性も含め子育て中の社員が多く、年5日分を上限に時間単位で取得することができる有給休暇を活用すれば、家族との時間も確保しやすいという。
「17時半に退社し、保育園に子どもを迎えに行きます。子どもの急な発熱時には時間単位で有給休暇を取得し、早退できますから、ありがたいです」(室井主任)
社長からメッセージ
勉強熱心で文章力のある人を求めています 世の中にない新しい装置やユニークな技術を開発するためには、勉強が欠かせません。少数精鋭の当社では、物理、化学、電気、機械などの幅広い知識が必要になりますし、技術革新に伴い知識を更新していく必要もあります。そうした新しい知識や技術を貪欲に吸収しようという意欲のある人を求めています。また、研究結果は報告書にまとめなければなりませんから、思考を整理して文章化する力も欠かせません。どの道に進もうと、就職した後も勉強は続きます。それが続けられる分野、企業を是非とも見付けてください。
●第21号 (2020年8月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。