職人が一本一本作る洋傘の専門店。 家庭と仕事のバランス、充実の研修を実現
<カイシャの特徴>
●事業内容:創業から90年以上。職人の手作りによる洋傘の製造及び卸売
●働く環境:諸制度や社内環境整備で女性が働き続けられる会社づくりに取り組む
●育成制度:入社1年目に資格取得。ベテラン社員による講習会で知識を共有
ギフトに人気の高級洋傘。高品質で長く使える傘を職人が一つ一つ手作り
小宮商店は1930年創業の日本製洋傘製造・卸売りの専門店。ビニール傘などの安価な傘が流通し、手作りの洋傘を製造・販売している会社が少なくなる中で、同社は品質にこだわった高級価格帯の洋傘を作り続けてきた。
同社の洋傘は一本一本職人の手作り。一人の職人が1日当たり3本から4本ほどの洋傘を丁寧に作り上げている。手に取ったときの心地良い質感、傘を開いたり閉じたりするときの滑らかな動きなど、細部のこだわりが詰まっているという。
「創業当時の製法を踏襲する一方で、素材や色、デザインは時代に合わせて変えています。傘を開いたときにカチっと音が鳴るように、作りの良さにもこだわっています」(小宮代表)
特に生地は創業当時から取引のある山梨県の織元による甲州織を採用しており、その高級感から同社の洋傘はギフト需要も高いという。
「今後は若い人にもっと当社の洋傘の魅力を伝えていきたいと思っています。20年、30年と長く使えるようこだわった製品なので、SDGsにも貢献できます」(小宮代表)
同社ではインターネットが普及した早い段階で自社ホームページを作り、洋傘の品質や作りの良さを伝える取組を行ってきた。また、職人が製造している姿を動画で伝え、実際に手間をかけて丁寧に作っていることをホームページ上で分かりやすく伝えている。最近では写真を中心としたSNS等も活用し、若い世代にも同社の洋傘の魅力を発信している。
さらに2014年には東日本橋に実店舗をオープン。
「店舗で接客する中で作りの良さや生地の質感を伝え、実際に手に取ることでお客様に納得してご購入いただける場所を作りました。持ち手の部分などの簡単なカスタマイズの注文も店舗限定で受けています」(小宮代表)

短時間勤務制度や テレワークを活用し、働きやすい環境に
同社では性別にかかわらず、能力次第で誰でも力を発揮できる環境づくりに取り組んでおり、販売、広報から職人まで幅広い職種で女性が活躍している。女性の役割に関する先入観を取り払うべく社員講習も行ったという。
また、産前産後休業や育児休業の取得実績もあり、育児や介護に限らず状況に応じた短時間勤務制度や、正社員で週休3日制を選べる「週4日勤務制度」も導入している。
入社5年目、製造部の伊丹さんは産前産後休業・育児休業を経て、短時間勤務制度とテレワークを利用している。
「生地の裁断作業があるときは月1回程度工房に出勤し、それ以外は自宅で傘の製造をしています。ミシンは職場から貸与、必要な部材は発送してもらえるので、子育て中にはありがたいです」
さらに、社内環境や働き方、業務に関する改善アンケートや全社会議で社員の希望を吸い上げる体制もある。実際に工房の設備改善や在庫の管理場所の増設、トイレのリフォームなどは社員アンケートから実現している。

社内研修や資格取得で 洋傘のプロへ成長。幅広い業務に挑戦できる
同社に入社すると、職種にかかわらず全員が店舗での接客業務を経験する。店舗に並んでいる傘に触れ顧客のニーズを肌で感じることで、自社の製品について良く理解することができるという。
社員全員が洋傘に関する深い知識を身に付ける一環で、JUPA(日本洋傘振興協議会)の認定するアンブレラ・マスターの資格を入社1年目に取得する。
さらに、社内で傘についての講習会を頻繁に開催。職人だけでなく全社員を対象にしており、生地や型の作り方、工法などを細かく学ぶことができる。講師を担当するのは業界歴50年のベテラン社員で、年次に関係なく知見や技術を広く共有する文化がある。
また、一つの仕事だけをするのではなく、複数の業務に積極的に関わるのが同社の方針。自分がやりたい仕事はメインの業務以外にも挑戦できる。
「販売、生産管理、在庫管理、部材発送など普段の業務は幅広いです。商品企画にも興味があり、代表に相談したところ、『やってみたら』と快諾してくれました。私が色の提案をした洋傘がもっと売れると嬉しいです」(入社3年目、生産管理部の飯野さん)

読者からひとこと
伝統に縛られない傘づくりの魅力 創業約90年の伝統と技術力を併せ持つ傘は、使い込むうちにどんどん愛着がわいてくるのだと思いました。製造に女性も多く携わり、社員の働き方にもこだわりがあると感じました。いろいろな業務を経験できるのはスキルアップにつながりそうです。

代表からのメッセージ
独断で仕事を進めるのではなく、全体を見て皆とコミュニケーションを取りながら進められる人が活躍できます。


●第29号 (2022年6月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。