技術力を高め、オリジナリティーのある プラスチックフィルム加工機械を世の中へ
<カイシャの特徴>
●事業内容:加工機械を作り約60年。オーダーメイドの貼る・包む・塗る技術
●育成制度:10年かけてじっくり育成。現場で技術を身に付け資格取得も推奨
●働く環境:若手からシニアまで多様な年齢層が活躍。「東京マイスター」も在籍
時代とともに事業を拡大。 顧客の求めに応じて様々な領域に挑戦する
1959年設立のムサシノキカイの歴史は、セロファン紙の製造装置の開発から始まった。時代とともに、食品などを包む素材がプラスチック製のフィルムに移り変わる中、同社は国産初の押し出しラミネート*を製造した実績を持つ。現在では、ラミネータ、コーティングマシン、フィルムキャストマシンの3種の機械を主力とし、その他にも多様なカテゴリーの機械の設計・製造に挑戦している。
ラミネータは、単層のフィルムを熱などを利用して貼り合わせ複層化するラミネート加工の機械。インスタントラーメン等に使われる食品パッケージや、医薬品の包材などの製造に利用され、同社の機械で作られた製品は日常の様々な場面で目にすることができる。
2つ目の主力製品は、コーティングマシン。例えば、フィルムの上に粘着液を塗ると粘着テープになるが、同社は高い開発力で、約20種類の塗り方を提供できる独自のコーティングマシンを製造している。
さらに、フィルムを製造するフィルムキャストマシンは、特殊な通気性フィルムを作ることができる。高度な成膜技術によって紙おむつなどに使用され、世界の紙おむつ生産において、同社のフィルムキャストマシンは約4割のシェアだという。
「当社の機械は100%オーダーメイド。お客様の希望をもとに作り、一つとして同じ仕様のものはありません。我々も毎回勉強をし続け、お客様の求めに応じる中でどんどん事業が派生してきました」(加藤社長)
同社ではほかにも様々な機械の製造を展開している。医薬品の錠剤の表面に文字を記すレーザーマーカーの心臓部も同社で製造しており、国内のほとんどの医薬品メーカーに納入実績があるという。
また、ラミネータの接着力を上げるために用いられていたオゾンをきっかけに、殺菌効果があるオゾン水を作る装置も製造。コロナ禍で成長した事業の一つとなった。
さらに、ホテルなどで使われるシーツを通すと自動でアイロンをかけ、畳んだ状態で出てくる巨大なローラー、ランドリーマシンもラミネータの応用で製造している。
「時代ごとにいろいろな要望をお客様からいただいてきました。できる限り応えていくために、絶えず新しい発想を生み出す姿勢を大切にしています」(加藤社長)
*押し出しラミネート:プラスチックの粒(ペレット)を熱で溶かしてラミネートフィルムを作る機械

機械に徹底して関わり 資格取得や研修参加でゆっくりと成長する
同社の新人研修は、社外研修と社内研修を合わせて3カ月程度。ビジネスマナーの習得のほか、東京工場など複数の製造現場で、ものづくりや安全について学ぶ。その後、配属現場で先輩に付きOJTで技術を身に付けていく。
「当社の製品は一つとして同じものがなく、一つの機械の設計から完成まで半年から1年程度かかります。ですから、網羅的な経験をして独り立ちするのにじっくり5~10年程度見ています。毎回作る機械が違うのが、当社の仕事の魅力です」(加藤社長)
また、資格取得支援制度を使えば会社による費用負担で各種資格の取得や外部講座の受講が可能。社員の自主的な成長をサポートしている。
入社1年目、本社技術部で設計図の作成を担当する張替(はりかえ)さんは「今後業務で必要になりそうな、循環水冷却装置のセミナーを受講しました。まだ新人ですが、少しずつ任せてもらえる領域が増えているのを実感できて嬉しいです」と話す。

フランクな雰囲気で 話しやすく相談しやすいベテランがいる環境
同社は10代の高卒新人から70代の熟練者まで幅広い年齢層の社員が在籍しており、風通しの良いフランクな雰囲気だという。東京工場には、東京都優秀技能者(東京マイスター)知事賞を受賞したベテランの旋盤工も在籍している。
マイスターと一緒に働けるのは刺激になると話すのは、入社1年目、東京工場で機械加工を担当する原さん。
「工場では、先輩たちが生み出した様々なパーツを見ることができて勉強の毎日です。年齢が離れた上司や先輩たちもとても話しやすく、気難しい雰囲気が全くないので楽しく働けています。後輩ができたら、先輩に教えてもらったことを思い出しながら指導していきたいです」


社長からのメッセージ
世の中にない新しいものを生み出すのが、ものづくりの面白さ。没頭できる楽しさもあるので、若い人にこそ挑戦してほしいです。

読者からひとこと
様々な世代と交流して自分らしく働ける 日常生活で目にするものを生み出すユニークな機械を作っていて、多くの技術を習得できそうです。また幅広い年齢層の人がいるからこそ、多様な視野を持って自分らしく働くことができ、モチベーションアップにもつながると思いました。

●第32号 (2023年2月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。