社内の手厚い講習会でプロを育て、非鉄金属への知見を継承し未来を拓く
創業から60年以上、自動車や家電、コンピュータ部品などに欠かせない非鉄金属の専門商社として業績を積み重ねてきた富士商事。半世紀を超える歴史の中で培ってきた知識とスキルを、多彩な社内講習会などで次世代に継承。若手を育むとともに、働きやすい環境の整備にも会社一丸となって取り組んでいる。
豊富な在庫で顧客のニーズに応える
富士商事は、専門商社として様々なものづくり企業に非鉄金属を卸している。非鉄金属と一口に言ってもその種類は豊富で、銅、黄銅・青銅、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなど、鉄以外の金属が該当する。その用途も多岐にわたり、身近なところではスマートフォンやコンピュータ用の半導体や電子部品、更には自動車や洗濯機、エアコンの躯体や冷媒管などと実に幅広い分野で使われている。
「お客様の用途によって、同じアルミでも棒状で納品することもあれば板状や管状のときもあります。求められるサイズや加工法も様々で、それをいつでも即納入できる在庫を豊富に有しているのが当社の強みです」と語る平野代表。近年では国内に留まらず、中国や東南アジアへの輸出も増えてきているという。
強みはそれだけではない。顧客の工場で、製造や加工時に発生した切れ端などの回収・再生事業も手掛けている。手間が掛かるため、同業他社は敬遠しがちだが、同社にとっては資源保全という環境への配慮であり、顧客にとっては廃棄の労力が省け、大変喜ばれているという。
各種現場の経験と講習会で専門知識を身に付ける
膨大な取扱品目がある同社の社員は豊富な商品知識が求められるとともに、注文受付、在庫管理、加工現場、配送、お客様との折衝をする営業など、各部署の業務に必要な知識も求められる。
同社では業務に必要とされる非鉄金属の知識や加工技術、品質管理、生産性訓練など、業務知識を学べる講習会が豊富にラインナップされており、社員は自分に必要なものを選んで受講できるようになっている。
「第２、第４土曜日は任意で受講できる社内研修が開催されているほか、外部の講師を招いた講習会もあります。これから主流となると言われる電気自動車に使用される非鉄金属は、当社でも新市場として着目しています。新しい分野についての勉強も欠かせません」と語るのは、入社16年、倉庫配送課の浅田係長。
その他、業務に必要とされる資格取得などについても会社が費用を負担している。
「クレーンやフォークリフト、玉掛け技能などの資格を会社の支援で数種類取得しました。倉庫配送課では倉庫での在庫管理などを任されているので、これらの資格は現場で大いに役立っています」（浅田係長）。
社員同士の協力を促し残業ゼロを目指す
同社では「会社の発展とともに働きがいのある会社であること」を目標に掲げ、働きやすい環境の整備にも積極的に取り組んできた。残業については１日あたりの上限を決めるとともに、毎週水曜日と毎月第１金曜日はノー残業デーになっている。
「普段からそれほど残業が多いわけではありませんが、ノー残業デーは確実に定時退社ができるので、友だちとの食事や映画の約束はそこに入れるようにして楽しんでいます」（入社３年目、営業事務課、高橋さん）
更に、今年の夏は、新しい試みとしてノー残業デーを拡大し、７月から９月は一切残業をせずに定時終業することを目標に取り組んだ。
「お客様あっての仕事ですから、残業しなくてはいけないというケースもあります。そんなときは社員同士がうまく連携して、できるだけ残業時間が少なくなるよう工夫しています」（高橋さん）
その他、同社では、社員の交流イベントも多く、社員が交代で幹事を務め、社員旅行やボーリング大会などを企画している。幹事には、企画提案から予算交渉など、社長や経営者側と折衝することも必要になる。こうした経験を積むことでお互いの距離が縮まり、イベントを成功に導くことで会社への帰属意識や仲間意識が高まるという。それが会社一丸となって取り組むという社風を育むことにつながっている。
ここがポイント！働くやりがい！
顧客から喜ばれる情報力 非鉄金属は、日ごとの相場があり、仕入れ時を間違えると自社だけでなく、顧客にもダイレクトに影響してしまう。そこで同社では、社会情勢を見極め、得た情報を各部署が共有し、それぞれの部署から顧客へ情報を提供、スムーズな売買へとつなげている。相場の読みが当たり顧客からの感謝の言葉を掛けられることが励みになるのはもちろん、自らの成長も実感できるという。それがモチベーションとなり、次なるステップを目指す動機となっている。
●第19号 (2019年12月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。
