ニーズの変化に合わせためっき技術開発と若手の成長サポートに注力する
<カイシャの特徴>
●事業内容:電子部品の機能やアクセサリーの美しさを高めるめっき加工を提供
●育成制度:職業訓練校での学び等約8年かけてめっき技術を習得
●働く環境:全員で若手を見守り会社全体でより良いものづくりを目指す
時代の流れに合わせた新たなめっき加工の技術開発で進化する
京王電化工業はクロムや銅、ニッケルなど幅広い用途に対応するめっき加工会社として50年以上の歴史を築いてきた。
身の回りの様々な製品に使われているめっきには、アクセサリーへの金めっきのような装飾性を高めるものや、鉄などさびやすい金属を守るための防錆(ぼうせい)処理のほか、銅の上に銀めっきを施して導電性をさらに上げるといった素材に新たな機能を加える用途がある。
「当社はパソコン、スマートフォン、医療機器など、新たな電子機器の登場やニーズの多様化に合わせて最適なめっき技術を開発し、お客様の信頼を得てきました」(姫野代表)
また、製品のコストダウンや軽量化にも欠かせない技術であるめっきは、時代に合わせて柔軟に変わってきたことが強み。1ミリの1万分の1ほどの薄い膜で、手頃な素材に金や銀など稀少な金属と同様の機能を与えるめっき加工を、姫野代表は「究極のエコ」と話す。
そんな中、同社は、高い技術力で各種めっき加工を行う製造部のほか、新たなめっき技術の開発を担う技術開発部を設けて先を見据えている。
「1~2年のスパンで成果を出すことを目標に、ホームランは狙わず確実なヒットになる技術開発に取り組んでいます」(姫野代表)
顧客からの要望や、仕入先の薬品メーカーからの情報をヒントに、今後需要が伸びそうなめっき加工の新技術を確立する。そうして生まれた生産ラインが同社の成長を支えている。
グローバル化の進展によって電気・電子機器に限らず多くの製造業が工場の海外移転を進め、国内のものづくりの空洞化が問題視されてきた。しかし日本のめっき加工業は、さほど大きな影響を受けていないという。
「約30年前も現在も、めっき加工業の国内生産高は4,000億〜5,000億円の間を推移していて、大きな変化はありません。また、新しい技術を使った新製品は国内で作られることが多く、品質面の信頼も高いことから、こうした国内需要の堅調が続いているのだと思います」(姫野代表)
一方、同社は取引先の部品メーカーの海外進出に伴い、2014年にベトナムに工場を新設した。国内での安定成長にプラスして海外展開も行うことで、結果として事業拡大に結び付いている。


品質や生産性の向上を率先して考えられる確かな技術者を育成
同社では、工業分野の知識がない新入社員でも確かなめっき技術者に育つよう、7~8年の長期的な視野で育成制度を整えている。最初の3カ月は先輩の指導のもと、現場で手を動かしながらめっき処理の基本を知るOJT研修を受ける。並行して週1回、先輩が講師を務める勉強会にも参加する。
「めっきは、理論で成り立っているので、知識を増やすほど技術が身に付き仕事の楽しさも広がるのです」(姫野代表)
その後は、手動ラインを担当して自分の手で作業することによりめっき処理の工程への理解を深めていく。そして、入社3年目頃にはめっきを専門的に学ぶため東京都鍍金工業組合高等職業訓練校に週2回、仕事を午前中で切り上げて1年間通う。費用は全額同社が負担している。
「高校の化学のような基礎から入るので、文系出身の私でも自然になじむことができました。単に目の前の仕事をこなすだけでなく、品質や生産性の向上にも目配りができる技術者になるには、学校で基礎知識を身に付けることが必要だと感じています」(入社2年目、製造部の佐藤さん)
修了後はめっき技能士2級の資格取得に臨み、5年目に毒物劇物取扱責任者、6年目以降にはめっき技能士1級の資格取得を目指すのが同社の基本的な人材育成の過程となっている。

高い技術と知識を持った特級技能士など、周囲にすぐ相談できる環境
同社は若手からベテランまで社員の年齢構成のバランスが良く、若手を全員で育てる社風がある。また、3人の特級めっき技能士が現場に在籍していることもあり、高度な技術指導を直接受けられる環境も充実している。
「私が最初に指導を受けたのも特級技能士の上司でした。何でも質問できる優れた技術者が近くにいるのは、とても恵まれたことだと感じています」(入社4年目、技術開発部の日吉さん)

代表からのメッセージ
仕事の中に自分なりの楽しさを感じる。当社ではそうした瞬間をより多く提供できるよう、業務分担や研修の機会を考えています。

読者からひとこと
高い技術を身に付けながら働けそうです!
働きながら職業訓練校に通うことができる点が魅力的です。学ぶための費用などを会社に負担してもらえることで勉強に専念でき、さらに向上心も上がると思いました。また、高い技術を持った先輩がいる環境は満足度にもつながりそうです。

●第31号 (2022年12月発行)掲載 ※掲載内容は発行日時点のものです。