東京カイシャハッケン伝!

MENU

成功への道を切り拓いた
リアルストーリー!

これぞ!わが社の成功物語

大きな成功の前には苦難が付き物です。
その苦難をどう乗り越えたのか成功までどのようにたどり着いたのかをインタビューしました!

Success Story01

多摩冶金株式会社

伝統を糧に組織体質を大幅に変革
世界レベルの熱処理施設の挑戦

多摩冶金株式会社

伝統を糧に組織体質を大幅に変革 世界レベルの熱処理施設の挑戦

熱処理において高い品質を誇る、国内有数の企業、多摩冶金。
民間航空機事業を主力とし、世界的エンジンメーカーであるロールスロイス社の認証を獲得するまでの道のりにはドラマがあった。

多摩冶金株式会社

世界三大メーカーのエンジン部品熱処理に挑む

たくさんの人と希望を乗せ、大空を舞う航空機。あれだけ大きな機体が空中に浮かぶのだから、高性能なジェットエンジンは世界中の技術が結集してできている。もちろん日本の技術も例外ではない。

武蔵村山市に拠点を構える多摩冶金は、航空機エンジンの世界三大メーカーのひとつ、ロールスロイス社(以下、RR社)のエンジン部品の「熱処理工程」の認証を持つ。

熱処理とは、金属に熱を加えたり冷やしたりしながら、形を変えることなく性質を高める処理のこと。金属に強さやしなやかさをもたらす。ものづくりに欠かすことのできない工程のひとつだ。
始まりは、日本の大手重工業メーカーA社の「認証を取得してほしい」というリクエストだった。A社はRR社のエンジン事業に参画するにあたり、規格を満たす熱処理施設が国内にないことが、ネックになっていたのでる。

一方、多摩冶金は創業から熱処理ひとすじで続けてきた老舗。確かな技術と誠実な仕事ぶりで、高い評判を得ていた。
時はリーマンショックの頃である。世界経済が混乱し、製造業も打撃を受けていた。活路を求めていた多摩冶金にとって、呼びかけを断る理由はなかった。
しかしながら、RR社の認証は非常に厳しいことで知られるだけでなく、ほかの国際規格への準拠が前提となる。険しい道のりが待ち構えていたのだ。

業務プロセスを大変革 仕事に誇りを持てる組織に

多摩冶金が認証を取得するには、越えるべき3つの壁が存在した。
1つ目は、仕事の進め方の壁である。熱処理作業は、温度と時間のコントロールがカギを握る。金属の性質や部品の用途・形状に合わせて、加熱・冷却にかける時間や装置の条件を決める。それを今までは、職人気質の工員たちが長年の勘と経験でこなしてきた。
しかし国際規格では、作業手順を一律化し、どの部品がいつどのような工程を経たのか、記録はつぶさに残しておく必要がある。装置や工具の管理も厳密に行わなければならず、率直に言えばやることが増えたのである。

2つ目は、人員体制や設備の壁だ。熱処理作業のプロセスを管理する人員が不足していたのである。これまで全体の1割程度だった品質・技術管理の人員比率を徐々に増やし、5割にまで高めた。
また、規格基準を満たすドイツやアメリカ製の装置の導入を決めた。価格は1台1億円近くになる上、仕様やマニュアルは英語で書かれている。発注からおよそ1年がかりで稼働にこぎつけた。

3つ目は、人材の壁だ。今までのやり方が通用しなくなり、現場は不満が募った。「非効率極まりない」「面倒くさい」、そうした声が次々と挙がった。
だが改革の原動力となったのは、やはり従業員だった。自分たちが手掛けた部品が世界中の空を飛び回るなんて夢のようだと、協力的な人たちもいたのだ。

奮闘する従業員の姿を見ながら、大切なのは「誇りを持って仕事に臨める環境」だと気付いた。そこで人材派遣の利用を取り止め、全員直接雇用に切り替えた。続いて企業理念にあたる、「The TAMAYAKIN Way」を定め、自社の姿勢を明確化した。また全ての従業員が航空機部品とそれ以外の部品の両方を取り扱えるように、教育を充実させた。全員で社運を賭けたプロジェクトに臨む一体感をつくり上げていったのである。

こうして様々な壁を乗り越え、RR社の認証を取得できたのは、2016年のこと。10年近くの念願がかなった瞬間だった。
そして現在、多摩冶金では民間航空機事業が売上げ全体の6割を占めるほどの主力となっている。ただそれ以上に、従業員一人ひとりが仕事にプライドを持って臨む、強い組織に生まれ変わったのは大きな収穫だった。
創業時からの熱処理事業を守りながら変革を図った新生・多摩冶金は、いま滑走路を飛び立ったばかりだ。

Success Story02

芝園開発株式会社

国内初の無人機械式駐輪場
時代の先を読む先見性が実現

芝園開発株式会社

国内初の無人機械式駐輪場 時代の先を読む先見性が実現

駐車場・駐輪場を核に、マナー環境の創造による社会貢献を掲げる芝園開発。
無人機械式駐輪場のパイオニアとして発展を遂げるまでの不屈のストーリーを追いかけた。

急成長の中での新規挑戦 鋭い感性でニーズを先取り

土木建設業から出発した芝園開発は、立体駐車場の建設を契機に、国内大手パーキング管理会社の代理店として、時間貸駐車場を開始。当時はまだ時間貸駐車場は不足気味で、芝園開発は急成長した。
しかし同社の海老沼孝二社長は、時代の変化による厳しさを熟慮し、時間貸駐車場の次を支える事業の柱が必要だと考えた。そこで、時間貸駐車場のノウハウの蓄積を活かそうと注目したのが自転車だった。 当時は、駅前の放置自転車が大きな社会問題となっていた。放置自転車で塞がった道路は、緊急車両や車いすの通過もままならない。

芝園開発株式会社

その様子を見ていた海老沼社長はある日、自転車を放置しているのは7割が女性だと気付く。彼女らがどうするのか、調べてみると、その多くは自転車を置いて電車に乗っていた。
自治体の月極駐輪場をなぜ利用しないのか。それは女性の多くが、週3〜4日働くパートだったからだ。毎日利用しない人が月極の契約などするはずがない。
自治体が駐輪場を整備し始めた頃と比べ、女性の社会進出は増えていた。しかし、そうした時代の変化は見過されていた。
いつでも手ごろな値段で利用できる駐輪サービスが必要とされている―。海老沼社長はそう考え、時間貸駐輪サービスの試験運用を社内に提案した。しかし社員は猛反対。当時、国内で無人の機械式駐輪場を設置した例はなく、駐車場事業が急成長しているのに、なぜわざわざ将来性の不確かな駐輪場を始めるのか、自転車の捨て場になると拒否された。
だが、海老沼社長には確固たる思いがあった。一つのビジネスモデルは5年もてばいい。10〜20年、同じ環 境の中で仕事が継続できるなどありえない。経営の安定には、新しい時代のニーズをつかんだ挑戦が不可欠だと。
そこで1,000万円を投資し、実験施設を社長の全責任で始動。社会一般の勤務時間に合わせて、8時間100円の利用料を設定した。すると「便利だからもっとつくって欲しい」との声が殺到。本格的な展開にのりだ。

IT推進で危機を脱却 自治体の街づくりにも寄与

時間貸駐輪場事業は順調に伸びた。一方、主力だった駐車場は、競合他社の乱立による価格競争や駐車場の供給過剰に見舞われ、利益率は降下していった。
更には、東日本大震災による電力会社の計画停電で電子機器が使えず、駐輪場を無料開放した時期もあった。売上げは鈍化し、利益が減り続ける中で、地主や銀行との交渉では、厳格な原価管理と詳細な説明が求められた。

そこで、収支の見える化、経営の透明化を図るべく、今までの全契約・管理状況を棚卸してデータベース化した。会計先行で進めたIT化を業務にも活かし、2012年、独自の施設統合管理システム「SHIP」を開発。インターネットの地図サービスと連動し、270カ所の駐車場・駐輪場の稼働状況がスマートフォンやタブレット端末でリアルタイムに把握できるようにした。

芝園開発株式会社

現在、駐車場、駐輪場に次ぐ事業に育っているのが、自治体と協働する総合自転車対策業務だ。駅前の駐輪場を整備するだけでなく、放置自転車への指導・撤去、集積・返却も含めて一括で請け負う。2007年、江戸川区からの受託を機に、現在は5自治体・7エリアで実施している。
駐輪場の支払いには鉄道系電子マネーを導入し、利用に応じてポイント付与も。利用者には短時間の買い物客も多いことから、最初の2時間を無料にするなど、利便性を考え、サービスを日々進化させている。
足立区では2時間無料の駐輪場を充実させ、自転車盗難件数を年間10%以上減らす結果につながった。墨田区から受託した錦糸町駅周辺では、2017年度、放置自転車台数を対前年度比51%減少し、都内ワースト 3位からランク外に大幅改善。
2018年3月に完成した総合自転車対策業務用システム「Capture」は、自転車放置の日時や場所を記録でき、啓発・撤去にあたる高齢者スタッフも簡単に扱える。

時代を先読みし、機動性を活かした創造性の発揮で、変化に即時対応しようという芝園開発の飽くなき挑戦は続く。

●第13号(2018年6月発行)掲載