東京カイシャハッケン伝!

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「江戸っ子1号」プロジェクト

可能性 中小企業を学・官が支え、秘める可能性を引き出す

江戸っ子1号に続け! 中小企業は今後ますます「大きな仕事」をしやすくなる

江戸っ子1号の成功によって、中小企業の秘める可能性に光が当てられたわけだが、江戸っ子1号のような成功事例は今後ますます増えてくるかもしれない。 というのもここ数年、各大学・研究機関が次々に連携のための拠点・部署を新設するなど、産学官、特に産学が連携する取り組みはさらに注力されている。江戸っ子1号の成功によって、産学官の連携を強化しようとする動きは、一段と加速するかもしれない。
そうなってくると、「大きな仕事をしたいなら大企業」といった考えが時代遅れになってくる可能性もある。中小企業であっても、資金・ノウハウ・最先端の研究成果といった「中小企業が持たない資産」については、周囲から支援を受ければいい。さまざまな力をうまく集結していくことで、中小企業で働いていても、大きな仕事を成し遂げやすくなっていくはずだ。
「政府や東京都などの自治体、そしてわれわれのような金融機関は、中小企業の支援に力を入れています。助成金や経営・技術面での支援など、さまざまな形で中小企業の可能性を引き出せるように努めています。
やる気のある社長・社員さえいれば、そうした支援制度を活用していくことで、中小企業であっても大きなプロジェクトに挑戦しやすくなっていくでしょう」(桂川コーディネーター)
「私ども1社では大きなことはできなくても、大学や官公庁・自治体などの力を借り、中小企業の協力の輪を広げていくことで「中小企業にできるわけがない」と言われたような夢物語でも、実現できることを証明できました。
大企業が同じことをやろうとしたら、私どもが使った数倍のお金・時間がかかったことでしょう。こんなに安く短期間で江戸っ子1号を成功に導けたのは、町工場の技術力があったからだと思います。
今後はますます中小企業の輪を広げ、さまざまな支援の力を借りていくことで、これまでの受け身の仕事から卒業して、仕掛ける仕事へと移行していこうと考えています。これまで下請けとして、大企業から依頼されたゴム素材の開発だけをしてきた私どもが、「こんなことができますよ」と逆に提案していく。あるいは「こんな仲間がいるから、ゴムだけでなくて製品全体が作れますよ」と売り込んでいく。江戸っ子1号のおかげで、そういった可能性が見えてきました」(杉野社長)

日本企業の99.7%が中小企業。圧倒的多数の中小企業の可能性を引き出したい

そして江戸っ子1号のプロジェクトが成功したことで、「自分の人生が変わった」と確かに実感している人物もいる。学生として、このプロジェクトに関わった肥澤さんだ。「大げさかもしれませんが、「人生変わった」と思いますね。江戸っ子1号に関わらなかったら、普通にどこかのメーカーに就職していたことでしょう。
それがこのプロジェクトを通じて中小企業の可能性を感じたことで、「もっと中小企業の可能性を引き出せる仕事に携わりたい」と考えるようになりました。それができる仕事をいろいろと探してみた結果、4月から働くことになったのは地方独立行政法人の東京都立産業技術研究センターです。最先端の高性能な工作機械を購入し、それを格安の料金で中小企業に貸し出すなど、中小企業の支援をしている団体になります。そういった活動をする団体を就職先に選んだのは、間違いなく江戸っ子1号に関わったからです。
日本にある企業の99.7%が中小企業です。中小企業の数は大企業よりも圧倒的に多いわけですから、世間の多くの人がわずか0.3%の大企業の方が「中小企業よりもすごい」と考えている現状には、どこかおかしさを感じています。中小企業の持つ可能性を引き出すお手伝いをしていくことで、少しでも「中小企業はすごい」と感じてくれる人を増やしていきたいですね」(肥澤さん)